BCPとは

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。(中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」より抜粋)
非常事態にどう行動するのかを事前に決めておくことで、突然災害等が発生した場合にもあらかじめ決めておいた手順に沿って動け、事業の継続や早期復旧を図ることができます。

中小企業のBCP

帝国データバンクが2024年に実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」によると、BCPの策定率は大企業で37.1%、中小企業で16.5%と、策定状況には企業規模による差が見られます。
人材や資本等に限りがある中小企業は、一度被害を受けると事業継続が難しくなるリスクが高まります。事業の停止は大きな財政的負担にもなるため、中小企業こそBCP計画の策定は重要です。
一方、中小企業にはコア事業を特定しやすい、柔軟性が高く迅速な意思決定が可能、従業員への伝達が容易、などの利点もあります。BCPの策定にあたっては、これらを意識することもポイントです。

実は出番はそんなに多くない?

災害が起こったからといって、即BCPの出番、とはなりません。災害が起こっても、被害が小さく通常業務の継続に問題がなければ発動にはなりませんし、被害がみられても状況を確認した結果、通常業務の遂行とあわせて復旧作業が行えるようでしたら発動の必要はないでしょう。
BCPは、
・災害により従業員の一定数が出社できない状況になった場合
・主要システムがダウンし、復旧の見込みが立たない場合
など、通常業務の延長では対処できないような本当の緊急事態に発動するものです。

また、中小企業の場合BCPの発動は社長の一声で行われる場合が多いですが、あらかじめ発動のためのトリガー条件を設定しておくことでよりスムーズな対処が可能となります。

BCPの策定方法

基本的な策定手順

1 目的と範囲の明確化
BCPの策定目的を明確にし、計画が目指す事業継続の方向性を定義します
2 リスク分析
事業に影響を与える可能性のあるリスクを特定し、それが発生した際の影響を評価します
3 事業影響分析
(ビジネスインパクト分析)
各リスクが事業にどのような影響を与えるのか分析します
4 事業継続戦略の策定
リスクが発生した場合に重要な業務を維持するための戦略を立てます
5 緊急対応手順の作成
緊急事態発生時に取るべき初期対応(従業員の安全確保、連絡体制の確立など)を具体化します
6 リソース確保と代替策の準備
リソースの確認と確保:BCPの実行に必要なリソース(バックアップのデータ、予備の設備や資材、人的リソースなど)をリストアップし、準備します
7 コミュニケーション計画の策定
従業員、顧客、取引先、地域の関係機関などとの連絡方法と連絡網を構築します
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オールハザード型BCP

特定の災害やリスクに限らず、さまざまな種類のハザード(災害・リスク)に対応できるように設計されたBCP計画のことです。個別のリスクことに対策を立てるのではなく、重要業務を実施するためのリソースを特定し、それぞれのリソースに対して使えなくなった場合の対処法を想定することで、あらゆる災害等に対応しようという考え方です。日本では地震、火災、水害等多くの災害が想定されることや近年感染症の流行やサイバー攻撃等のリスクも懸念されていることから、オールハザード型のBCP計画の作成が重要視されています。

BCPは守りだけではない

BCPの策定には、事業やリソースの洗い出し等に多くの労力が必要となるなど、マイナスイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、BCPを策定することで顧客や取引先、株主からの信用を得られたり中長期的な経営戦略を考える入り口になるなど、自社の企業価値の向上にもつながります。
中小企業のBCP 信頼度向上

顧客・取引先等からの信頼度向上

BCPを策定することで、災害等が発生した場合でも事業を早期に再開し、商品の供給等が継続できる準備が整っていると示せます。これにより顧客や取引先からの信頼が高まり、競合他社との差別化につながります。
また、投資家や金融機関に対してリスク対策がしっかりしている企業であることを示すことで、資金調達等が有利になります。
中小企業のBCP 人材確保

人材の確保・定着に貢献

危機時にも従業員の安全と雇用の継続を目的とした計画にすることで、従業員が安心して働ける環境づくりにもつながります。安定性の高い職場とみなされることで、優秀な人材の確保や離職率の低下も期待できます。
中小企業のBCP 効率化

業務プロセスの改善と効率化

BCPの策定過程で重要事業のプロセスを再確認することで、業務を見直すきっかけにもなります。通常時の生産性向上や効率的で強固な組織体制の構築も期待できます。

まずは小さな取組みから

BCP計画がない場合、いきなり策定を始めるのはハードルが高いと感じられるかもしれません。その際にはまずは小さな取組みから始めてみましょう。
小さな取組みを積み重ねることで、限られたリソースの中でもBCPの基盤を整えることができます。まずは低コストでできるところから始め、段階的にBCPを強化していくと効果的です。
中小企業のBCP 連絡先の更新

重要連絡先リストの作成・更新

従業員や主要な取引先、サプライヤーの連絡先リストを作成・更新してみましょう。緊急時にはこのリストを参照して、スムーズに連絡が取れるようになります。
中小企業のBCP 避難経路の確認

避難経路の確認

火災や地震等が発生した場合の避難経路や集合場所を確認します。自治体のホームページや建物管理者への確認、従業員が見られる場所へ避難経路の掲示等を行いましょう。
中小企業のBCP バックアップ体制の整備

簡易的なバックアップ体制の整備

業務に必要なデータや書類のバックアップをクラウドサービスや外付けハードディスクに定期的に保存します。低コストで導入できるクラウドサービスは、災害時のデータ喪失リスクを軽減できます。
中小企業のBCP 責任者の決定

緊急時対応の責任者の決定

緊急時に従業員をまとめるリーダーや責任者をあらかじめ指名しておき、役割を明確にします。こうすることで、緊急時に混乱が生じにくくなります。

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“事業継続力強化計画認定制度”
中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が「事業継続力強化計画」として認定する制度で、中小企業のための簡易なBCPと位置づけられます。認定を受けた中小企業は税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられるため、スモールスタートの一つとしてこちらの計画策定もおすすめです。
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